用語解説

撥水性
はじめに
撥水性（はっすいせい）は、物質が水を弾く特性を指します。ガラスにおける撥水性は、建築、車両、電子機器などさまざまな分野で重要な役割を果たしています。撥水性の向上は、ガラスの機能性と耐久性を大幅に向上させるため、近年の技術開発において注目されています。本記事では、ガラスの撥水性について、その仕組み、利点、技術、および適用例について詳しく解説します。
撥水性のメカニズム
撥水性は、表面の性質によって水分子がその表面に留まることを防ぐ特性です。ガラスの撥水性は主に以下のメカニズムによって実現されます。
●表面エネルギーの低下
ガラス表面に撥水処理を施すことで表面エネルギーが低下します。表面エネルギーが低いと水分子がガラス表面に強く吸着することが難しくなり結果的に水滴が表面にとどまらず滑り落ちやすくなります。
●親水性と撥水性の制御
撥水性を持たせるためには、親水性（表面が水に親和的な性質）を低下させる必要があります。撥水コーティングや処理により表面の親水性を低くすることで水を弾く性質を得ることができます。
●微細な表面構造
ナノテクノロジーを用いた表面処理では、ガラス表面に微細な構造を作り出すことができます。これにより、ガラス表面の粗さが増し水滴が表面から滑り落ちやすくなります。これも撥水性の向上に寄与します。
撥水性の技術と処理方法
撥水性を持たせるための技術にはさまざまな方法があります。代表的な方法には以下のものがあります。
●撥水コーティング
撥水コーティングは、ガラス表面に撥水性の化学物質を塗布する方法です。一般的には、フルオロカーボンやシリコン系の化学物質が用いられます。これらのコーティング剤は、ガラス表面に薄い膜を形成し水分子が表面に接触するのを防ぎます。
●プラズマ処理
プラズマ処理は、ガラス表面にプラズマを照射する方法です。プラズマ処理によって表面に撥水性のある化学基を導入することができ撥水性を向上させることができます。プラズマ処理は均一なコーティングが可能で複雑な形状のガラスにも対応できます。
●ナノコーティング
ナノコーティングは、ナノメートルサイズの撥水材料をガラス表面にコーティングする技術です。ナノスケールの構造が水分子との接触を最小限に抑え高い撥水性を実現します。ナノコーティングは、長期間にわたり撥水性を保持することができるため、耐久性が高いとされています。
●化学処理
ガラス表面を特定の化学薬品で処理する方法もあります。例えば、シラン系化合物を使用して、ガラス表面に撥水性の層を形成する方法です。この処理により、ガラスの撥水性を改善し長期間にわたって維持することができます。
●撥水性の利点
ガラスに撥水性を持たせることで以下のような利点があります。
●視界の改善
撥水ガラスは水滴が表面に残りにくいため視界がクリアになります。特に自動車のフロントガラスや建物の窓において雨天時の視界を良好に保つために重要です。
●汚れの付着防止
撥水性のガラスは汚れやほこりが付きにくく付着した汚れも簡単に落とすことができます。これにより、ガラスの清掃頻度が減少し維持管理が容易になります。
●耐久性の向上
撥水コーティングや処理は、ガラス表面の摩耗や劣化を防ぐ効果があります。特に外部環境にさらされるガラスにおいては、耐久性が向上し長期間にわたって性能を維持できます。
●安全性の向上
撥水性のガラスは、雨水や雪などの水分が表面に残りにくいため、滑りやすさが減少し、事故のリスクが低下します。特に公共施設や高層ビルの窓などでは、安全性の向上が重要です。
撥水性ガラスの適用例
撥水性ガラスは、多くの分野で利用されています。以下にいくつかの適用例を示します。
●自動車のフロントガラス
車両のフロントガラスに撥水性コーティングを施すことで雨天時の視界が改善され、安全運転が可能になります。
●建物の窓
建物の窓に撥水性処理を施すことで、外的な汚れや雨水が付着しにくくなり建物の外観を美しく保つことができます。
●電子機器のディスプレイ
スマートフォンやタブレットのディスプレイに撥水コーティングを施すことで、画面の清掃が容易になり使用感が向上します。
●防水装置
防水装置や工業機器に撥水ガラスを使用することで機器の耐久性や性能が向上します。

結論:
撥水性は、ガラスの機能性を大幅に向上させる特性です。撥水性を持たせるためには、表面エネルギーの低下や微細な表面構造の形成、撥水コーティングなどの技術が用いられます。撥水性を実現することで視界の改善、汚れの付着防止、耐久性の向上、安全性の向上など多くの利点があります。これにより、ガラスの性能が向上しさまざまな分野での利用が可能となります。撥水性ガラスは、今後ますます進化し私たちの生活をより快適にすることでしょう。